2015年12月ごろに作った曲。高3の最後の冬休みだったかな、それぐらいに録りました。
曲名の「NAIRINSA」とは、その名の通り車の内輪差のことなのですが、この内輪差が曲を作るキッカケになりました。
中学高校と自転車通学だった僕は、計6年の自転車乗り。
50メートル走で一度も8秒を切ったことがない僕も、自転車に乗ればスピードスター。
小学2年の頃に補助輪が外れてから、僕はもはや風も同然でした。
音も光もすべて置き去りにして、あとからそれがついてくる。
それが、僕が自転車に乗るということ。
「ぼくも風をあつめて、蒼空を翔けたいんです。」
松本隆は僕が自転車を漕ぐのを見て、この「風をあつめて」を書いたと言われています。
バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズのドクも、僕が光を越えて駆け抜ける様を目撃し、あのデロリアンの、次元転移装置のインスピレーションを得たと言われています。
僕が自転車に乗るというのは、世界が回るということ。
とにかくそういうこと。
まぁ、そんな心持ちで自転車を漕いでいました。
しかし、そんなスピードスターでも最近流行りのガソリン自動車には敵わず、水たまりの泥水を掛けられたり、道の譲り合いの結果同時に発進してしまい、軽く轢かれたりしていました。
どんなに息を切らしてペダルを漕いでも、初老のおじいちゃんが乗るボロボロの軽トラに追いつけない。
「車すげぇ。。。」
高校3年の貧弱な帰宅部の脚力は、たった10mlのガソリンの燃焼に全く歯が立たない。
そういう事実は自然の摂理と同様で、生きていくうちに自然と身についてゆくものでした。
車というのは人間の真横を時速60kmで駆け抜ける1トンの鋼鉄動物。
こんなのがもし自然界にいたとしたらアホ強。自然の外れ値。
最新の動物。
野生の自動車。
集団で油田を襲い、夜の荒野に、不気味に響くのはエンジンの低い轟。
彼らは決して眠らないという。
単純な突進という攻撃手段に、我々有機生命は打つ手なし。
最後のパンダが撥ねられたらしい。
あの16馬力の、可愛らしいてんとう虫「スバル360」
このスバル360でさえ、最高速度は80キロ。重量はライオン2頭分。
どんなにベンドアームプルオーバーをして肉体を鍛えても、東洋哲学に浸かり精神を磨いても、図書館で文献を読み漁り法学に精通したとしても、一度もご飯を残したことがなくても、綺麗な目をしていても、この庶民カーに睨まれたら最後。
80kmで迫るスバル。
またたく間に暖色のヘッドライトに照らされる
まぶしい!!!
そして、けたたましい空冷2ストロークエンジンの音に包まれた次の瞬間には真っ暗。
それはもう真っ暗なのです。
もう僕たちにできるのは、腐食剤を使った嫌がらせみたいな持久戦だけ。
これを轢かれざまにかけて様子を見るのみ。それが人類が出来る唯一の抵抗。
じっくりコツコツ。世代を越えながら、彼らが錆びゆくのを待つしかない。。
パンクさせればいいじゃんと思った、そこのシルクハットのあなた。
かつては尖った石でタイヤをパンクさせるという攻撃が有効でしたが、現在では車軍の「タイヤ内部に草パンパン詰め」という完璧な防御策によって効果なし。
車はそもそも生き物なんかじゃないと思った、同じガムを2週間噛み続けているそこのあなた。
車のフロントを見たことがありますか?
ちょっと顔っぽいっしょ。
そう。彼らには顔があります。
生物に多様性が認められるように、様々な種類と顔立ち。
それはつまり、彼らが生き物であるという証拠。
生物の進化、誕生というものは時に特異的な形で生じるもの。
あなたがこうして固くなったガムを噛み続けている間にも、車の自我は宿ろうとしているのです。
そしてその自我が己の生存を望んだとき、車は食物連鎖の頂きへ君臨するのです。。。
なんて、、恐ろしいんだ。。。。。
とにかく車には勝てないのです。
話が少し脱線しましたが、車に轢かれると大体いい事は起こりません。
自転車通学を長くしていると、ちょっとした「おっ!危ない!」という危険に出会うことがあります。
2015年の10月、ゆったりした足取りで自転車を漕いでいる時のこと。
家まで続く長い道。
車が2台ギリギリすれ違えないぐらいの細道。慣れ親しんだ道。
いつものアホ面で「カニクリームコロッケが食べたい」なんて思いながら漕いでいると
背後からノリノリなスピードのハイエースが!!!
ハイエース「どうもぉ!ハイエースで〜す!!」
ブロロロ〜!!!
僕「むむ!!!」
すごい勢いで僕を追い越したかと思うと、キレッキレの左ターンで僕の自転車スレスレのところを曲がってゆきます。
キィーーーッ!!!!
僕「のぁああああああ!!!!」
僕は自転車ごとのけ反り急停止。
ハイエースはそのまま市街地へと消えてゆきました。。
あぶな
僕「(なんて活きの良いハイエースなんだ。。。)」
軽く唖然としながら自転車を再び漕ぎ出す僕。
僕「(内輪差がキツイ車だったら持ってかれてたな。。。)」
僕「(内輪差かぁ〜。。。。)」
そんな感じで内輪差について考えていたら、急にしょぼいメロディが!!
僕「内輪差〜でぼ〜く〜は♪ し〜〜んでしまった〜〜♪」
僕「(おっ!なんか思いついたぞ!!!)」
これを忘れないようにと脳内で繰り返しながら家まで漕ぎ、そして曲の前半部が出来ました。
しかし前半部分が出来ると、その後の展開が思いつかなくなってしまい、モチベーションが急激にダウン。
行き詰まると大抵の事を投げ出す僕は、この曲についても綺麗な放物線で投げ捨て、適当にLINEバブルなどをしながら日々を潰していったのでした。
2ヶ月ほど経ち、高校最後の冬休みを迎えた僕は、長期連休あるあるの「意味のない徹夜」を決行。
「夜中にYouTubeを見てたら寝れなくなっちゃったから、何ならこのまま起きてるか。」
そういう、一番しょうもないタイプの徹夜。
現代っ子だったら必ず一度は経験している、このしょうもな徹夜。
ブルーライトにバリバリ影響される自律神経。
しかし脳自体の連続稼働時間は限度を越えているためIQは半減。
このタイミングで九九を出されても、多分7の段が答えられません。
日が昇りつつある頃、半開きの口でボケーッとギターを弾いていると2ヶ月前に作りかけた曲を思い出しました。
僕「そういえば、なんか作ってたなぁ〜。徹夜のテンションで続き作っちゃうか!!」
といった形で曲作りをリスタート。
徹夜テンションというものは恐ろしいもので、普段なら「3歩進んで2歩下がる」といった曲作りも「3歩進んで、せっかくなのでもう2歩進む」といった感じに。
あやふやな意識で、適当に録ったものをどんどん採用。
「少年はあっけなく死んだ。。。」から始まる中盤以降の展開はその徹夜テンション。
ギターのリフも謎のセリフも、全部徹夜テンションのアドリブによって出来ました。
その後結局眠気に耐えきれず爆睡をかますのですが、目覚めて正気に戻ってから聞き直すと、頭にはでっかいクエッションマークが。
僕「何言ってんだこの人。。。」
目覚めたら数時間前の自分が「彼の魂はガラスのように透き通っていったのさぁ!!」とか何か言ってるんですよ。
なかなかおぞましい体験です。
徹夜明けの支離滅裂さに大いなる恐怖を感じながらも、ミックスをして完成させたのでした。
そして、今年に入ってボーカルを録り直すために歌詞を文字に起こしたのですが、やはり脳がクラクラしましたね。
22歳になって、17歳のときの深夜テンションを再現して歌うのが面白くて滅茶苦茶ヘラヘラしてました。全く成長していない気がする。。
まぁ、そんな感じの曲です。
車は強くて危ないから気をつけよう!!
一つ余談を。
この「NAIRINSA」のジャケットを見てください。
なかなか素晴らしい表情を、風格を持った車でしょ。
車を新種の生物と考えた時に、このピックアップトラックは確実に裏ボス。族の長。
幾度の危機を乗り越え、達観して濁った目に、口元には余裕を持った微笑み。
確実に100手先を読んでいそうな微笑み。
何も手を下さずに、相手が道を間違えて自滅するのを最初から分かっているタイプの顔。
これは栃木県にある大谷博物館という採石場跡へ、家族と行った際に撮った写真です。
採石場跡へ向かう山道に、異様なオーラを放つこの車を発見。
被写体として完璧すぎたので、思わずパシャリと撮ってしまったのでした。
こんなのほぼ遺跡じゃん。。
そして、この写真をジャケットに選んでいたのですが、その後ちょっと驚くような事があったのでした。
数年後、大学2年の冬休み
例のごとく夜ふかしをして、寝ぼけた顔で園子温監督の「リアル鬼ごっこ」を見ていると。。。
でーん!
僕「おぁっ!!!!!」
突然見覚えのある車が画面に登場。
この映画の撮影場所として大谷博物館が使われていたのですが、そのシーンで全く同じ構図の同じ車が!!
びっくり!
はい。ただそれだけです。
その時は「自分と園子温のフィーリングが完全に一致した!!これからは「ほぼ園子温」って呼んでください!!!」なんて思ってテンションが爆上がりしていたのですが、こんな凄い車あったら絶対何かに使いますもんね。
それでピックアップトラックが持つ磁場に少し痺れたりしていました。
はい。
こんな感じで滅茶苦茶脱線してしまいましたが、そんな曲でした。
近況を少し話すと、「初めて食べた鳥刺しで食中毒になった」とか「去年の就活で行った適性診断の結果がスゴかった」とか「最近本当にボケが加速している」とか色々ありましたが、これらはまた別の機会にでも記事に出来たらなと思います。
鶏肉は焼いたほうがいい。車には気をつけたほうがいい。
今の僕が言えるのは、それだけですかね。。。
まぁとにかくこれからもボチボチ更新をしてゆくので、その時はよろしくおねがいします〜
では、!!
歌詞
Beep Beep 見えたぜ 貴様の白い肌
Beep Beep 避けたぜ ヒマラヤのすぐ側で
内輪差で僕は死んでしまった
Beep Beep 聞いたぜ 滅茶苦茶にでかい音
Beep Beep 轢いたぜ 迫力の回転で
内輪差で僕は死んでしまった
少年はあっけなく死んだ しかし、魂だけは残ったのだった!
フワァ〜ンと残った そう、この地に確かに残っている
「誰かが見ることは出来るのか?」 そんな質問は野暮だね
見えないさ 彼の魂はガラスのように透き通っていったのさ!
世界中の人達にもずっと 汝にも掴ませなかった
そんな事があっただなんて思わなかっただろう
思わなかっただろう サビ一秒前!
俺 死んじゃった ベイベー
わはははは 少年は生き続ける
どんな形になろうとも 彼は生き続けているんだ
おっとっとっとっとっとっとと
Won't you come to play?
0コメント